事務所で作業をしていると、顧客から電話が入ります。「契約内容を確認したい」「解約について聞きたい」「請求について家族に代わって確認したい」。専任の相談窓口がなければ、総務や営業、店舗の担当者が、その場で内容を聞き取ることになります。

こうした電話の一部は、会社とのやり取りだけでは解決せず、消費生活センター等への相談につながる場合があります。つまり、公的な相談統計に表れる前の段階で、同じ性質の電話を企業の窓口が受けている可能性があります。

では、実際にどのような相談が増えているのでしょうか。独立行政法人国民生活センターが2026年8月5日に公表した「2025年度 全国の消費生活相談の状況-PIO-NETより-」から、件数の変化と相談者の特徴を確認し、会社の電話窓口で何を点検できるかを整理します。

この記事でわかること

  • 消費生活相談の件数と、増加が目立った商品・役務等
  • 契約した本人以外から相談が寄せられるケースの位置づけ
  • 電話窓口の記録方法や受け方を点検する順番

この統計が数えているもの

今回の数字を読むうえで、最初に区別しておきたいのが「企業にかかってきた問い合わせ件数」と「消費生活センター等が受け付けた苦情相談件数」です。

PIO-NETは、国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベースです。今回の集計対象は、2025年度に全国の消費生活センター等が受け付け、PIO-NETに登録された苦情相談のうち、2026年5月末日までに登録されたものです。2008年度以降は、消費生活センター等からの経由相談を含みません。

したがって、後述する100万件を「企業の電話窓口に100万件の苦情が入った」と読むことはできません。一方で、契約、解約、請求、サービス内容などをめぐる相談がこれだけ登録されている以上、自社の窓口にも同じ性質の電話が来ていないかを点検する材料にはなります。

100万件を超えた相談と増加分野

2025年度の消費生活相談は1,006,377件でした。2024年度の913,355件から約9万件増えています。直近10年間の総件数は、89.1万件、94.2万件、99.7万件、94.0万件、94.3万件、84.8万件、89.9万件、89.4万件、91.3万件、100.6万件と推移しています。

増加件数が最も大きかったのは「賃貸アパート・マンション」で、34,908件から43,148件へ増加しました。退去時の原状回復トラブルや、管理会社のサポートへの不満に関する相談がみられています。同じ業種の電話の受け方は、不動産会社・賃貸管理会社の電話運用でも整理しています。

続いて「他の役務サービス」は28,523件から36,703件、「紳士・婦人洋服」は14,925件から21,729件、「インターネット接続回線」は20,640件から25,735件、「エステティックサービス」は9,807件から14,691件へ増加しました。

相談内容も一様ではありません。分電盤やガス給湯器の点検の勧誘、有料質問サイトの解約、通信販売で商品が届かない、電話勧誘で契約した光回線を解約したい、契約したエステサロンが破産した後も請求が続くといった相談が資料に記載されています。販売購入形態では「通信販売」が38.0%と最も高くなっています。

電話をかける人が契約者本人とは限らない

電話窓口では、「契約者本人ではない人から連絡があった」という場面も想定しておく必要があります。

2025年度の契約当事者を年代別にみると、70歳以上の相談が25.6%と最も高くなっています。さらに、契約当事者の年代別に相談者の内訳を見ると、契約当事者が20歳代以下と70歳以上の場合、契約当事者とは別の人が相談する割合が高くなっています。

ここから読み取れるのは、相談者と契約当事者を常に同一人物として扱う前提では足りないということです。電話を受けた担当者は、「誰からの電話か」と「誰の契約についての電話か」を分けて確認できる状態にしておく必要があります。

本人以外からの電話をどこまで受け付けるか、どの情報まで案内するかについて、この統計だけから一律のルールを決めることはできません。ただし、担当者ごとの判断だけに任せているなら、少なくとも受付時に確認する項目や記録方法を整理する余地があります。

統計上の分類は、会社では一本の電話として現れる

公的統計では「賃貸アパート・マンション」「インターネット接続回線」「エステティックサービス」といった分類で集計されています。しかし、会社の電話窓口で最初に受けるのは分類名ではありません。

「解約したい」「請求の理由を確認したい」「商品が届かない」「家族の契約について聞きたい」「以前話した担当者とのやり取りを確認したい」といった一本の電話として入ってきます。その段階で、後から内容を追える記録が残っているかどうかは、窓口運用を確認する際の重要なポイントになります。

担当者の記憶だけに頼る運用では、別の担当者が電話を受けたときに、過去のやり取りを確認しにくくなる場合があります。何をどこまで残すかは、クラウドPBXの通話録音の考え方とあわせて検討できます。

まず点検したい電話の受け方

最初に確認したいのは、電話を受けた後に何が残っているかです。発信者、契約当事者、用件、対応内容など、後から必要になる情報をどこまで記録しているかを確認します。

次に、本人以外からの電話への対応です。誰が契約当事者なのかを確認する手順があるか、担当者によって受け方が変わっていないかを見直します。そのうえで、過去の対応を別の担当者が確認できるかを点検すると、電話を受ける個人だけではなく窓口全体の運用として整理しやすくなります。

VoiceLine PBX クラウド版は、クラウド型のPBXで、通話録音に対応しています。対応の記録・証跡を残すことができ、CSV・JSONでの出力、画面からの印刷、期間や発信者による履歴検索に対応しています。通話のモニタリングや録音を運用する場合は、就業規則への記載や利用者への通知など、社内での取り扱い整理が必要です。なお、緊急通報の110番・119番とFAXには対応していません。

まとめ

2025年度にPIO-NETへ登録された消費生活相談は1,006,377件となり、賃貸アパート・マンション、他の役務サービス、紳士・婦人洋服、インターネット接続回線などで増加がみられました。ただし、これは消費生活センター等が受け付けた苦情相談の統計であり、企業の電話窓口が受けた問い合わせ件数そのものではありません。

それでも、契約や解約、請求、サービス内容をめぐる同じ性質の電話が自社の窓口にも来ている可能性はあります。まずは「何を聞き取っているか」「契約者本人以外からの電話をどう扱っているか」「後から対応を確認できる記録が残っているか」の順に見直すことで、担当者の裁量に任せている部分を具体的に確認できます。

出典