「お前じゃ話にならない、責任者を出せ」「誠意を見せろ」。電話口でこうした言葉を浴び続ければ、対応したスタッフは疲弊します。2026年10月に向けて、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対応について、企業に相談体制や記録などの整備が求められる流れが進んでいます。中小・中堅企業の経営や人事、電話窓口の責任者が、何から備えればよいのかを整理します。

2026年10月、何が変わるのか

改正労働施策総合推進法により、これまで企業の自主的な取り組みに委ねられていたカスハラ対策について、相談体制や記録などの整備が企業に求められる方向になります。すでに義務化されているパワーハラスメント対策と同じく、「会社として対応する姿勢」を形にしておくことが期待されます。

備えの出発点は、条文の細かな解釈を覚えることではありません。自社の従業員が理不尽な言動から守られる仕組みがあるか。相談を受け止める窓口があるか。起きたことを記録として残せるか。この三つを足元から見直すところから始まります。

電話窓口は「守りにくい」現場

カスハラが起きやすい場所のひとつが、電話窓口です。対面とちがって相手の様子が見えにくく、長時間の電話や、声を荒げての要求を、担当者がひとりで抱え込んでしまいがちです。「自分の対応が悪かったのかもしれない」と感じて、上司に相談できないまま我慢を重ねるケースも珍しくありません。

しかも電話は、後から「言った・言わない」が問題になりやすい場でもあります。どんなやり取りがあったのかが残っていないと、従業員を守るための判断も、相手への毅然とした対応も難しくなります。だからこそ電話窓口では、「気づく」「助ける」「残す」という三つの備えを、できるだけ仕組みとして用意しておくことが効いてきます。

「気づく」:通話中に異変をとらえる

VoiceLine PBX クラウド版のカスハラ対策機能では、通話中の言葉と声色の両面から状況を見ています。暴言や脅迫、エスカレーションを示すことばに加えて、声のトーンといった音声感情を統合してスコアを出し、通話が荒れてきた兆候をとらえます。担当者が「これはつらい」と感じる前に、周囲が状況に気づける点が、ひとりで抱え込ませない第一歩になります。

なお、検知の精度(閾値)は運用に合わせて調整します。窓口の業種やお客さまの層によって「強い口調」の感じ方は変わるため、最初から完璧を求めず、運用しながら自社に合った設定へ近づけていくのが現実的です。

「助ける」:管理者が即座に入れる

異変をとらえたら、管理者(スーパーバイザ)へ即時に通知が届きます。通知を受けた管理者は、通話の傍聴で状況を確かめ、担当者だけに聞こえるささやきで「いったん保留にして大丈夫」と助言したり、必要なら割込で会話に入って対応を引き取ったりできます。

電話対応でいちばんこわいのは、担当者が逃げ場のないまま矢面に立たされ続けることです。「いざとなれば上司が入ってくれる」とわかっているだけで、現場の安心感は大きく変わります。こうした介入のしくみは、従業員を守る体制づくりとして、これからの備えと相性のよいものです。製品の詳細はカスハラ対策のページでもご紹介しています。

「残す」:記録と証跡を整える

対応した内容は、記録・証跡として残せます。記録はCSV・JSONでの出力と、画面からの印刷に対応しており、いつ・誰が・どのような対応をしたかを後から振り返れます。履歴は期間や発信者で検索できるため、繰り返し問題になっている相手の把握にも役立ちます。

通話後処理(ACW)ではAIが対応メモの下書きを用意し、多言語の通話は日本語の要約として残せます。記録に氏名や電話番号などが含まれる場合は、個人情報のマスキングで配慮できます。これらは、相談体制とあわせて「起きたことを会社として把握する」土台になります。

運用前に整えておきたいこと

【重要・法的免責】AIはあくまで検知・要約・記録の「補助」であり、ハラスメントに該当するかどうかといった法的な判断は行いません。最終的な判断と対応は、運用者であるみなさまが行うことになります。また、通話のモニタリングや録音を運用する際は、就業規則への記載や、利用者への通知といった社内での取り扱い整理が必要です。導入の前に、この点を関係部署で確認しておく必要があります。

技術面の前提は次のとおりです。AIの処理は当社管理下の自前GPUで行い、通話内容を外部AI(OpenAI等)へ送信しない設計です。お客さまとのデリケートなやり取りを外部に預けたくない場合の選択肢になります。一方で、VoiceLine PBX クラウド版は緊急通報(110番・119番)およびFAXには対応していません。これらが必要な場合は別回線などを併用してください。なお、カスハラ対策は契約オプションでのご提供となります。

まとめ:まずは自社の困りごとの整理から

2026年10月に向けた備えは、機能の多さで決まるものではありません。まず「どの窓口で」「どんな言動に」「誰が困っているのか」を言葉にすると、気づく・助ける・残すのどこに穴があるかが見えます。穴のない部分に機能を足しても、現場の負担は変わりません。相談と見積りは無料です。窓口の数と現在の受け方をうかがったうえで、カスハラ対策が役立つ場面かどうかを含めてお答えします。